AI動画で同じキャラクターを保つには、人物説明を長くする前に、合格済みの参照フレームを1枚決め、難しいショットに必要な角度だけを追加し、生成後は最初・動きの難所・最後の3点を同じ基準で確認します。
静止画で同じ顔を作れたことと、動画の途中でも同一性が保たれることは別の合格条件です。動き、遮蔽、カメラ回転、照明変化が入ると、開始画像が正しくても途中で顔や体格が変わることがあります。狙うのは「一度それらしい動画が出ること」ではなく、どこでブレたかを再現可能な形で判定できる制作フローです。
まず「同じにするもの」と「変えてよいもの」を分ける
キャラクターの一貫性を「全部同じ」と書くだけでは、表情や動作まで固定してしまいます。生成前にロック/変更表を1枚作ります。
| 固定する項目 | 変えてよい項目 | 許容しないブレ |
|---|---|---|
| 顔の骨格、目鼻の配置 | 表情、視線 | 顎の形や目の間隔が別人になる |
| 髪の輪郭、前髪、長さ | 風による揺れ | 分け目や髪の長さが変わる |
| 身長感、肩幅、頭身 | ポーズ、歩幅 | ショット間で体格や年齢感が変わる |
| 署名的な衣装・小物 | 動作に伴うしわ | 色、柄、眼鏡、バッジが消える |
| 線、質感、色設計 | 光、背景、カメラ | 実写とイラストが意図せず混ざる |
重要なのは、プロジェクトで識別に不可欠な特徴を少数に絞ることです。五つすべてを平均して合格にせず、たとえば「赤い左右非対称の耳」がブランド識別子なら、その1項目の失敗だけで不合格にします。
参照画像は「枚数」ではなく難しいショットから逆算する
日本語の検索結果では「参照画像」「キャラクターシート」「同じ顔」が頻出し、複数角度の資料を勧めるページも多く見られます。ただし、枚数を増やせば必ず良くなるわけではありません。日本語の動画キャラクター一貫性の解説も、横顔や後ろ姿、長いシーンでブレを確認する必要を挙げています。
最初に用意するのは、背景が単純で、顔・髪・体格・衣装が判別できる「承認済みアンカー」です。そのうえで、最も難しい必須ショットに合わせて追加します。
- 振り返るなら、正面に加えて斜めまたは横顔
- 全身で走るなら、頭身と靴まで分かる全身
- 背中を向けるなら、後頭部と背面衣装
- 小物を使うなら、持ち方と左右が分かる資料
- 画角が大きく変わるなら、寄りと引きの両方
Nano Banana Pro は、この静止画のアンカーや参照フレームを準備・修正する層として扱います。動画の時間的な一貫性は、別の動画生成経路で検証する必要があります。
始点・始終点・参照動画のどれを選ぶか
入力方式は、提供したい証拠の種類で選びます。
| 入力方式 | 向いている場面 | 入力前に確認すること | 合格時に確認すること |
|---|---|---|---|
| 始点フレームのみ | 短く、カメラと動きが控えめな1ショット | 開始画で必要な顔・服装・体格が見えるか | 中間と終端で別人化していないか |
| 始点+終点フレーム | 終了構図や次カットへの接続を決めたい | 両端が同一人物で、衣装・小物・画調に矛盾がないか | 途中がモーフィングや単純なフェードで逃げていないか |
| reference-to-video | フレーム0以外でも人物・衣装・画調の証拠が必要 | 経路が対応する参照形式、枚数、権利条件 | 参照した五つの特徴が動きの難所でも残るか |
| 構造化された強い経路 | 多角度、激しい動き、複数ショット、複数人物が必須 | 軽い経路で必要証拠が不足しているか | 最難関ショットを基準に工程全体が通るか |
Google の現行ドキュメントには、Veo で最初と最後のフレームを指定する入力が案内されています。ただし、これは入力方式の存在を示すもので、途中の同一性や狙った遷移を保証するものではありません。
YingTu の日本語動画ワークスペースは、2026年7月27日の確認時点で、Veo/Wan 系のテキストから動画、画像から動画、始点、始終点、参照メディアの設定面を表示していました。ただし有効な経路キーが必要で、この調査ではキャラクター一貫性を保った成功出力まで検証していません。したがって、YingTuの動画ワークスペースは本番性能を断定する場所ではなく、害のない合成素材で入力方式を限定テストする候補として扱ってください。
1本目は「難しい1ショット、変更は1つ」にする
たとえば、架空の赤いキツネの店員を縦型広告に使うとします。難所は「正面から横を向き、青い箱を棚へ置く」動作です。
- Nano Banana Pro などの静止画工程で、正面アンカーと横顔資料を作り、耳の左右差、白い口元、緑のエプロン、青い名札を承認する。
- 始点フレームで短い診断クリップを作る。最初はカメラ固定、動作は横を向くことだけにする。
- 最初・顔が最も横を向く瞬間・最後を静止画として取り出し、五項目を別々に判定する。
- 耳だけ崩れたなら、耳の参照を直して同じ条件で1回再試行する。カメラ移動や背景変更は同時に足さない。
- 合格後に箱を置く動作を追加し、最後の合格フレームだけを次のショットの引き継ぎ候補にする。
日本語の実務ガイドでも、変数を一度に一つずつ変えることや短いクリップで確認することが提案されています(参照画像と失敗対策のガイド)。ここではさらに、どのフレームの何が失敗したかを記録して、次の操作を限定します。
3点×5項目の同一性記録
生成ごとに次の記録を残します。評価語は 合格 / 要修正 / 判定不能 程度で十分ですが、判定不能を合格に混ぜないでください。
| 確認項目 | 最初のフレーム | 動きが最も難しい中間 | 最後のフレーム |
|---|---|---|---|
| 顔の骨格・目鼻配置 | |||
| 髪の輪郭・前髪 | |||
| 体格・頭身 | |||
| 衣装・小物 | |||
| 画調・質感 |
同じ記録に、プロジェクト名、経路とモデル、確認日、参照版、素材の権利確認、最難関ショット、固定項目、許容変更、禁止ブレも残します。さらに人物以外の欄として、動き、カメラ、タイミング、終了構図を判定します。
総合判定は 合格 / 修正 / 経路切替 / 中止 の四つです。次ショットへ渡す場合は、承認者、承認日、フレーム番号を記録した「承認済み引き継ぎフレーム」だけを指定します。前の動画の最終フレームを無条件で使うと、わずかなドリフトを次のクリップへ持ち越します。
失敗したときの最小分岐
- 静止画の時点で違う → 参照フレームを修正する。矛盾する参照は外す。
- 必要な角度だけ崩れる → その画角に近い承認済み参照を追加し、フレーミングを合わせる。
- 動きの途中だけ崩れる → 診断クリップを短くし、カメラまたは動作の複雑さを一つだけ下げる。
- 終端構図が必要なのに外れる → 始点のみから始点+終点へ切り替える。
- フレーム0の情報だけでは足りない → 対応状況を確認して reference-to-video またはより構造化された経路へ切り替える。
- 同じ重要項目が、変数を減らした条件でも2回失敗 → プロンプトを延々と増やさず、経路切替、手作業での修正予算、または中止を判断する。
中止条件は品質要求によって変わります。SNSの小さなマスコットと、クライアント承認が必要な主演キャラクターでは、同じ誤差を許容できません。最難関の必須ショットが通らないなら、簡単なショットの平均点で合格にしないことが重要です。
実在人物・顧客素材はアップロード前に止まる
実在人物、子ども、顧客から預かった素材、ライセンスキャラクター、未公開デザインでは、まず次を確認します。
- 本人または権利者の同意と、許された利用目的
- 肖像、著作権、商標、契約上の制限
- 使用する経路の保存期間、学習利用、削除、公開範囲
- 社内承認者と、公開・納品前のレビュー工程
一つでも不明なら、アップロードせず、架空キャラクターや無害な合成素材で工程だけを試します。キーを持っていること、無料または有料で使えること、ダウンロードに成功したことは、個人の顔や顧客IPを安全に扱える証明にはなりません。
よくある質問
参照画像は何枚必要ですか?
固定枚数では決めません。まず明瞭な承認済みアンカー1枚で始め、最難関ショットに必要な横顔、全身、背面、衣装、小物だけを追加します。似た正面写真を何枚も重ねるより、欠けている角度を補うほうが診断しやすくなります。
始点と終点を指定すれば、途中も同じ顔になりますか?
保証されません。始終点は両端の構図を示せますが、途中の変形、遮蔽、カメラ変化は別に確認する必要があります。必ず動きが最も難しい中間フレームを検査してください。
前のクリップの最後を次の始点にしてよいですか?
そのフレームが五項目の審査を通った場合だけ使います。通っていなければ、元の承認済みアンカーへ戻すか、最後のフレームを静止画工程で修正してから再承認します。
プロンプトを長くすればキャラクターは安定しますか?
長さだけでは安定しません。固定する特徴と変えてよい要素を分離し、視覚的な参照を与え、失敗した項目だけを一度に一つ修正してください。
Nano Banana Proだけで動画まで作れますか?
この記事ではNano Banana Proを静止画・参照フレームの準備層として扱います。動きは別の動画経路で生成し、その出力を3点×5項目で検査します。静止画の成功を動画の一貫性の成功とみなさないでください。



